映画レビュー
フランス映画。サスペンス物かと思って観たら、どちらかというとヒューマンドラマのような映画。主役は若い女医ジェニーで、引退間近のベテラン医師の小さな診療所で働いているが、インターンの青年とのちょっとした諍いで、診察時間終了後に来た訪問者に応対しなかった。翌日、その訪問者の女性が死体で発見されたことで罪の意識を持った女医が、自ら亡くなった女性が誰だったのか調べようとする。
映画の冒頭のいくつかのカットで、この女医が競争率の高い病院での採用が決まって転職しようとしていること、診療所で主治医として患者に信頼されていること、年寄りの患者にも優しく接していること、移民らしいフランス語を話せない患者にも分け隔てなく接していること、キツく叱ったインターンにたいして必要以上にフォローアップしていること、などを見せる。これだけで、特に説明的なセリフなしに、この主人公が若いが優秀で誠実な人であることを見ている側に伝えるところは手際が良い。
この女医さん、けっこう危なそうなところまで聞き込みに行ったり、医者なのでちょっと変な患者と診察室で二人きりになったり、見ていてハラハラするが本人は全く安全を気にしている様子なし。そうしているうちに、ひょんなことから主治医として診ている少年が事件に関して何か知っていることに感づくが、医者としての守秘義務を守り通して警察に通報しないのも危なっかしい。最後の方で分かるのは、亡くなった女性を死に追いやった原因となった男も根っからの悪人ではなく普通の人。なので女医の良心に訴える説得で警察に自首することになるが、この男がもうちょっと悪い人やったら全く違う結末になっていたところ。
主演のアデル・エネルはフランスの若手俳優の有望株らしいが、映画で見るのはこれが初めて。ちょっともっさりした感じがするが、誠実で毅然とルールを守り通す役をよく演じていると思う。その他の俳優陣も知らない人ばかり。
ポピュリズムの台頭やらで嫌な世の中になってきたけど、人の良心を信じて誠実であることは大事やなと思わされる映画。この映画を良いと思うかどうかは主人公の女医に感情移入できるかどうかに掛かっていると思う。こんなお医者さんがおったらええなと思う反面、現実にはここまでやる人はおらんやろうとも思う。なぜこの女医がこういう「良い人」になれたのかという背景が描かれていれば、もう少しすんなりと入っていけたかもしれない。
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2017年に観た映画
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