イングリッド・バーグマンの絶頂期は40年代なので、リアルタイムで観たのは親の世代。
映画を観るようになって新作・封切りで観たのは「オリエント急行事件」と「秋のソナタ」くらい。それ以外はリバイバルや昔の映画を集めた{なんとか映画祭}みたいなところで観たもの。数本はカラーで大半はモノクロやったけど。
40年代に出演した次の14本の映画のリストを見るとバーグマンの凄さがよく分かる。
タイトル | 監督 | 共演者 |
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六月の夜(1940年)Juninatten | Per Lindberg | Gunnar Sjöberg |
四人の息子(1941年)Adam Had Four Son’s | Gregory Ratoff | Warner Baxter |
天国の怒り(1941年)Rage in Heaven | W.S. Van Dyke | Robert Montgomery |
ジキル博士とハイド氏(1941年)Dr.Jekyll and Mr.Hyde | Victor Fleming | Spencer Tracy |
カサブランカ(1942年)Casablanca | Michael Curtiz | Humphrey Bogart |
誰が為に鐘は鳴る(1943年)For Whom the Bell Tolls | Sam Wood | Gary Cooper |
ガス燈(1944年)Gaslight | George Cukor | Charles Boyer |
白い恐怖(1945年)Spelbound | Alfred Hitchcock | Gregory Peck |
サラトガ本線(1945年)Saratoga Trunk | Sam Wood | Gary Cooper |
聖メリイの鐘(1945年)The Bells of St.Mary’s | Leo McCarey | Bing Crosby |
汚名(1946年)Notorious | Alfred Hitchcock | Cary Grant |
凱旋門(1948年)Arch of Triumph | Lewis Milestone | Charles Boyer |
ジャンヌ・ダーク(1948年)Joan of Arc | Victor Fleming | José Ferrer |
山羊座の下に(1949年)Under Capricorn | Alfred Hitchcock | Joseph Cotton |
最初の「6月の夜」はスゥエーデンの作品なのでハリウッドで撮ったのは残りの13本。大プロデューサー、セルズニックの後押しがあったとはいえ、これらの監督は当時一番脂の乗り切った巨匠といえる人たちで、相方は錚々たるハリウッドのトップスターが並ぶ。ハリウッドでのデビュー作は1939年の「別離」であるが、これを観た一流監督がこぞって自分の作品に出演させたいと思ったのだろう。
当時のハリウッドの女優は男優よりも十分背が低く、化粧は厚めというタイプが多かったが、そこに規格外の女優がスゥエーデンからやってきて、あっさりと皆の心を掴んでしまったところは凄い。そして、そのままハリウッドに留まっていれば絶頂期を謳歌できたはずなのに、その地位だけでなく家族も捨ててイタリアのネオ・レアリズモの巨匠、ロベルト・ロッセリーニの元へ走ってしまう。インタビューではハリウッドで10年近く仕事して、スターシステムで大作を作るのに飽きて、ヨーロッパの芸術的映画に惹かれたようなことを言っている。
イタリアに渡った後のロッセリーニ作品への出演を回顧して、脚本にない台詞をアドリブでしゃべるように言われて、そういう訓練も経験もしていなかったので苦労したという話があった。イタリア時代の出演作を観る機会がなかったので何とも言えないが、総じて評価が高くないのは結局バーグマンはアメリカ映画の方が向いていたのかもしれないと思う。事実、アメリカに復帰した1956年には「追想」で2回めのアカデミー主演女優賞を獲っている。
バーグマンの過去のインタビューを改めてこの映画で観て、自分のやりたいことをに向けて突き進むパワーを感じた。多くの場合、その強い気持ちが良い結果に繋がったのだろうと思うが、イタリアに行ったことは良かったのかどうか分からない。一方、上手く行かなかったのはジャンヌ・ダーク関係ではないか。バーグマンはなぜかジャンヌ・ダークに相当入れあげていて、舞台にも何度も出ているし、1948年には映画「ジャンヌ・ダーク」への出演を果たしている。が、個人的には、この映画はバーグマンのジャンヌ・ダークへの想いが空回りしている駄作としか言いようがない。まあ、そういうところも含めて、バーグマンはバーグマンなのだと思うけど。
バーグマンの代表作というと「カサブランカ」の名前がでていくることが多いが、これはボギーの映画でバーグマンは脇役でしかない。洒落た映画なので好きではあるが、代表作としてはヒッチコック監督の3本を挙げたい。あと、映画の中で、ビリー・ワイルダーから出演依頼があって迷っているというようなことを言っていたが、残念ながらそれは実現しなかった。ビリー・ワイルダーが名作を連発し始めるのは50年代にはいってから。バーグマンの絶頂期にはワイルダーはまだ実績が少なく、その後イタリアから戻った時には、ワイルダーはマリリン・モンローやシャーリー・マクレーンなどお気に入りの女優を見つけていたので出会うチャンスがなかったのかもしれない。ビリー・ワイルダーは好きな監督の筆頭なので、バーグマン出演作を観たかったというのが本音。
映画にはシガニー・ウィーバーやリブ・ウルマンも出演してバーグマンの人柄を語っていた。リブ・ウルマンは見た目がかなり変わっていて本人と分からんかったけど。もちろん、ロッセリーニとの間の3人の子供、最初の夫との間の娘も出演して母親のことを語る。家庭では良き母親でありながら、映画に出演することに駆られる根っからの女優でもあったバーグマンを家族の視点から観ることができて興味深い。日本とアメリカのこの映画のポスターはバーグマンの若い頃の写真を使っているが、本国スウェーデンのポスターは中年に掛かった頃の写真を使っている。女優バーグマンだけでなく人間バーグマンの映画にしたかった子どもたちの意図が入っているのかなと感じた。
2016年に観た映画
番号 | 邦題 | 原題 | 監督 | 評価 |
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41 | イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優 | Jag ar Ingrid | Stig Bjorkman | 4.0 |
40 | ティエリー・トグルドーの憂鬱 | La Loi du Marche | Stephane Brize | 3.5 |
39 | イレブン・ミニッツ | 11 Minut | Jerzy Skolimowski | 3.5 |
38 | ニュースの真相 | Truth | James Vanderbilt | 3.0 |
37 | バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 | Batman v Superman: Dawn of Justice | Zack Snyder | 3.5 |
36 | ブルックリン | Brooklyn | John Crowley | 2.5 |
35 | トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 | Trumbo | Jay Roach | 4.0 |
34 | AMY エイミー | Amy | Asif Kapadia | 4.0 |
33 | 帰ってきたヒトラー | Er ist wieder da | David Wnendt | 4.0 |
32 | 教授のおかしな妄想殺人 | Irrational Man | Woody Allen | 4.5 |
31 | レジェンド 狂気の美学 | Legend | Brian Helgeland | 3.5 |
30 | デッドプール | Deadpool | Tim Miller | 4.5 |
29 | マネーモンスター | Money Monster | Jodie Foster | 4.0 |
28 | サウスポー | Southpow | Antoine Fuqua | 3.5 |
27 | マイケル・ムーアの世界侵略のススメ | Where to Invade Next | Michael Moore | 3.5 |
26 | ヘイル、シーザー! | Hail, Caesar! | Joel Coen, Ethan Coen |
4.0 |
25 | マジカル・ガール | Magical Girl | Carlos Vermut | 4.5 |
24 | レヴェナント:蘇えりし者 | The Revenant | Alejandro González Iñárritu | 4.0 |
23 | アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち | The Eichmann Show | Paul Andrew Williams | 3.5 |
22 | ボーダーライン | Sicario | Denis Villeneuve | 4.0 |
21 | ミケランジェロ・プロジェクト | The Monuments Men | George Clooney | 2.5 |
20 | Johnny Winter: Down & Dirty | Johnny Winter: Down & Dirty | Greg Olliver | 3.5 |
19 | スポットライト | Spotlight | Tom McCarthy | 4.5 |
18 | さざなみ | 45 Years | Andrew Haigh | 4.5 |
17 | ルーム | Room | Lenny Abrahamson | 3.5 |
16 | 最高の花婿 | Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu? | Philippe de Chauveron | 3.5 |
15 | 人生は小説よりも奇なり | Love is Strange | Ira Sachs | 3.5 |
14 | レッキング・クルー 〜伝説のミュージシャンたち〜 | The Wrecking Crew | Denny Tedesco | 4.0 |
13 | リリーのすべて | The Danish Girl | Tom Hooper | 4.5 |
12 | SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁 | Sharlock: The Abominable Bride | Douglas Mackinnon | 2.5 |
11 | ヘイトフル・エイト | The Hateful Eight | Quentin Tarantino | 4.5 |
10 | マネー・ショート 華麗なる大逆転 | The Big Short | Adam McKay | 4.0 |
9 | キャロル | Carol | Todd Haynes | 4.5 |
8 | サウルの息子 | Saul fia | Laszlo Nemes | 3.5 |
7 | ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります | 5 Flights Up | Richard Loncraine | 3.0 |
6 | 独裁者と小さな孫 | The President | Mohsen Makhmalbaf | 4.5 |
5 | ブラック・スキャンダル | Black Mass | Scott Cooper | 4.0 |
4 | 消えた声が、その名を呼ぶ | The Cut | Fatih Akin | 4.0 |
3 | 完全なるチェックメイト | Pawn Sacrifice | Edward Zwick | 4.0 |
2 | ブリッジ・オブ・スパイ | Bridge of Spies | Steven Spielberg | 4.5 |
1 | スター・ウォーズ/フォースの覚醒 | The Force Awakens | J.J. Abrams aigh | 4.8 |