監督はジェイク・ギレンホールが一人二役を演じる。監督は数カ月前に観たばかりの「プリズナーズ」と同じドゥニ・ビルヌーブ。 主演のジェイク・ギレンホールも前作から再度の起用で監督に気に入られたか。しかも今回は一人二役。
映画のストーリー自体はそんなに複雑やないけど、解釈の仕方は幾通りも考えられて何が正解なのかは明らかにされない。
ネタバレ御免で好きなように書くと、
解釈-1 アダムとアンソニーは一卵性双生児で、何らかの理由で別々に育てられたが、ひょんな事で再会した。これは2人の遺伝的性質が同じだけでなく、腹の傷痕まで同じということが説明できんので却下。それ以前に、この解釈はつまらなすぎる。
解釈-2 アンソニーとアダムが同一人物の裏表を表すという解釈。どちらかといえばアンソニーが実体でアダムが想像。奥さんが妊娠中なのに浮気しているアンソニーが改心して良い夫に戻るという過程を、アダム=良い夫、アンソニー=浮気な夫という対比、かつアンソニーが浮気相手と交通事故で死ぬということでアダム(=良い夫)が奥さんの元で戻るという解釈。
ただし、改心したはずのアンソニー改アダムはラストシーンの直前で秘密クラブの鍵を受け取ってまた浮気心が再発して、改心なんてあてにならんことを示唆。さらにはラストシーンで、男は勝手やってるようやけど、やっぱり奥さんにコントロールされているという悲しい真実。 この解釈はまあ、ありかな。
その場合、原題の「Enemy」は、アンソニーとアダムという相反する人格が互いに「敵」というのが素直な解釈やけど、男の敵は女という対比もありかもしれん。
解釈-3 妊娠中のヘレン(アンソニーの奥さん)が超能力を持った蜘蛛女。この蜘蛛女は気に入った男を旦那にするけど、大概の男は最初はええけどだんだんとあかんようになるから適当な時期で新しい男とリプレースする。ただし、とっかえひっかえていたんでは世間体もままならんので、蜘蛛女の魔力で新しい男を今の男のそっくりさんにした上で、古いのをお払い箱にするという一連の手続きを描いた映画。アダムが学校で支配者が一般民衆を支配する方法について講義していたけど、ヘレン(女の象徴的存在)=支配者、アンソニー&アダム=支配されている男、という構図。
これがいちばんしっくりくるし、好みはこの解釈。
解釈以外でも、映画のバックで流れる音楽(というか音)が不協和音で不安を掻き立てるような効果をだしているとことか、暗い部屋で(たぶんPCの)LED表示ランプが点滅してるのが、アダムの眼球に反射しているところの映像など、細かな所まで作りこんである感じ。一見インディーズの低予算映画を思わせる雰囲気があるけど、たぶんわざとそういう色合いを付けたんじゃないかと勘ぐらさせられる。
イザベラ・ロッセリーニがゲスト出演みたいに出てくるのも懐かしくて良し。 人によって評価は分かれると思うけど、個人的には好きな部類の映画。
Trailer
番号 | 邦題 | 原題 | 監督 | 評価 |
---|---|---|---|---|
1 | ブランカニエベス | Blancanieves | Pablo Berger | 4 |
2 | フォンターナ広場 イタリアの陰謀 | Romanzo di una strage | Marco Tullio Giordana | 3 |
3 | 鑑定士と顔のない依頼人 | The Best Offer | Giuseppe Tornatore | 3 |
4 | オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ | Only Lovers Left Alive | Jim Jarmusch | 4 |
5 | さよなら、アドルフ | Lore | Cate Shortland | 3 |
6 | ROOM237 | Room 237 | Rodney Ascher | 2 |
7 | エレニの帰郷 | The Dust of Time | Theo Angelopoulos | 4 |
8 | アメリカン・ハッスル | American Hustle | David O. Russell | 3.5 |
9 | ウルフ・オブ・ウォールストリート | The Wolf of Wall Street | Martin Scorsese | 4.5 |
10 | 大統領執事の涙 | The Butlerl | Lee Daniels | 3.5 |
11 | エージェント:ライアン | Jack Ryan: Shadow Recruit | Kenneth Branagh | 2.5 |
12 | ダラス・バイヤーズクラブ | Dallas Buyers Club | Jean-Marc Vallee | 4.5 |
13 | MUD – マッド – | Mud | Jeff Nichols | 3.5 |
14 | ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 | Nebraska | Alexander Payne | 3.5 |
15 | それでも夜は明ける | 12 Years a Slave | Steve McQueen | 4 |
16 | LIFE! | The Secret Life of Walter Mitty | Ben Stiller | 3.5 |
17 | ホビット 竜に奪われた王国 | The Hobbit: The Desolation of Smaug | Peter Jackson | 3 |
18 | あなたを抱きしめる日まで | Philomena | Stephen Frears | 3.5 |
19 | ウォルト・ディズニーの約束 | Saving Mr. Banks | John Lee Hancock | 4 |
20 | ブライアン・ウィルソン ソングライター ザ・ビーチ・ボーイズの光と影 | Brian Wilson: Songwriter 1962 – 1969 | Chrome Dreams | 3 |
21 | 8月の家族たち | August: Osage County | John Wells | 4.5 |
22 | アメイジング・スパイダーマン2 | The Amazing Spider-Man 2 | Marc Webb | 3 |
23 | プリズナーズ | Prisoners | Denis Villeneuve | 4 |
24 | ブルー・ジャスミン | Blue Jasmin | Woody Allen | 3.5 |
25 | ダークブラッド | Dark Blood | George Sluizer, | 4 |
26 | ある過去の行方 | Le passé | Asghar Farhadi | 4 |
27 | インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 | Inside Llewyn Davis | The Coen Brothers | 4 |
28 | チョコレートドーナツ | Any Day Now | Travis Fine | 3.5 |
29 | グランド・ブダペスト・ホテル | The Grand Budapest Hotel | Wesley Anderson | 3.5 |
30 | サード・パーソン | Third Person | Paul Haggis | 4 |
31 | her/世界にただひとつの彼女 | Her | Spike Jonze | 2.5 |
32 | ジゴロ・イン・ニューヨーク | Fading Gigolo | John Turturro | 3 |
33 | 複製された男 | Enemy | Denis Villeneuve | 4 |