映画レビュー
過去に観た記憶がないので、これが劇場で観た初めてのフィリピン映画。
主人公のトリシャはミスコン女王を狙うトランスジェンダー。映画は、彼女(彼)の学生時代、父親と衝突して家を出る頃、ゲイ仲間との生活、ミスコンでの優勝と突然の死、遺言に従って友人がやってくれる死後の日替わり化粧、等々が時間通りでなく、新旧入り混じったシャッフル状態で進んでいく。なので、映画が始まってからしばらくは状況が飲み込めないが次第に分かってくる。
トリシャ役のパオロ・バレステロスはこの映画に出演する前から、自らにものまねメイクを施して、ジュリア・ロバーツ、アン・ハサウェイ、ビヨンセなどのそっくりメイクの写真をInstagramに投稿していたという。ちなみにInstagramのアカウント「pochoy_29」はフォロワー2百万人。この映画では、死後のそっくりメイクは映画のプロのメイクのスタッフではなく、パオロ・バレステロスが自前でやっていたらしい。
監督のジュン・ロブレス・ラナは早くにカミングアウトしたゲイなので、トランスジェンダーに対する理解、共感といった面では問題ないはず。しかし、映画を観ていると、トリシャを含めたトランスジェンダーの人たちを美人に撮るというよりも、ありのままに撮ろうとしているのかなと感じた。メイクで綺麗にしているが、なんとなく女になりきれないような部分を映像技術で手を加えるのではなく、敢えてそのまま残しているような感じ。そもそも、顔を作っても肩幅はごっついし。
トリシャは男運が悪くて、けっこうきつい場面もあるが、全体としてはコメディの作りでシリアスになりすぎないところが良い。だからといって手抜きしている訳ではなく、丁寧に作られている。全体を通して、画面がカラフルで色の使い方が良い。フィリピン映画侮りがたし。
しかし、タイトルはなんで、「Die Beautifully」ではなく「Die Beautiful」やねんやろ?
予告編
2017年に観た映画
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