映画レビュー
1967年にデトロイトで起こった暴動を題材とした映画。冒頭で、当時の時代背景が簡潔に語られ、暴動の発端となった黒人の違法酒場の摘発シーンから始まるが、観ていていつ何が起こるか分からないという緊張を映画の終わりまで強いられる。
監督が「ハート・ロッカー」、「ゼロ・ダーク・サーティ」のキャスリン・ビグローなので観客をドキドキさせるのはお手の物。ただし、上記2作が戦争や特殊部隊の映画だったのに対して、この映画はアメリカの大都市が舞台。なので暴動とはいえ戦場ほど危険ではないはずと思わせておいて、暴動の流れで起こった「アルジェ・モーテル事件」での違法捜査で命を落としたり落としかけたりする場面へ移すことで観客にプレッシャーをかけ続ける。
主演はスターウォーズ新シリーズで売り出したジョン・ボイエガとほとんど無名と言ってよいウィル・ポールターの2人。面白いことに、2人ともイギリスの俳優。ボイエガは冷静で状況判断のできる黒人の警備員役を好演。ただし、この役はあまり面白みがないというか地味な役なので、法律無視や人種差別はあたりまえで殺人も厭わない悪警官という役のポールターにおいしいところを持っていかれた感じ。このポールター、眉が吊り上がっていて、メイクなしでバルカン星人やエルフの役ができそうな特異な顔をしていて憎々しいところがなかなか良い。
日本公開の直前まで配給会社は「アカデミー賞最有力候補」と宣伝していたが、アカデミー各賞の候補作が発表されると「デトロイト」はいずれにもノミネートされず空振りに終わった。確かに、映画としてはイントロからの暴動の部分、「ザ・ドラマティックス」などのショービジネスの部分、「アルジェ・モーテル事件」の部分、その後の捜査や法廷の部分などが漫然とつながっていて焦点がぼけてしまった感じはある。監督がドキュメンタリー調で撮りたかったのかもしれないが、例えばウィル・ポールター演じる警官の中心に絞り込んだ内容にすれば面白かったのではないかという気がする。
予告編
2018年に観た映画
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