映画レビュー
今年のアカデミー作品賞候補になった「最後の追跡」と同じくNetflixが制作、ネット配信のみで劇場公開なしという作品。 出演者にウィル・スミス、 ジョエル・エドガートン、 ノオミ・ラパスと一流どころを揃え、制作費9000万ドルと劇場公開用作品並の予算をつぎ込んだことで話題になっていたが、アメリカでは放映開始後3日間で視聴者は1100万に達したという(ニールセン調べ)。
映画は警察官2人の凸凹コンビの古典的なパターンに、エルフ、人間、オークといった「種族」が共生するファンタジーの世界を合体させたもの。舞台は未来のロサンゼルスで、遠景からのビルのシルエットなどは未来風になっているが、映画で描かれる日常生活はテクノロジーの進歩を感じさせるようなところもなく、感覚的には現代と大して変わらない。
根本的に違うのは、エルフ、人間、オークの順に種族間の序列が歴然としていること。エルフの居住区は街全体が綺麗で行き交う人はウォールストリートのエリートのような風体をしているし、警察組織もトップはエルフ。第一線の警察官は命の危険と隣合わせで人気のある職業ではないが人間の仕事。はみ出し者の警察官ウォード(ウィル・スミス)が罰ゲームのように組まされた相棒がオークとして初めて警察官となったジャコビー(ジョエル・エドガートン)で、この2人が関わった事件から話が展開していく。
エルフやオークが出てくるファンタジー物では「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズが連想されるが、こういった作品のファンタジーの世界での物語ではなく、我々の現実世界の延長に他種族を持ち込んだことが目新しい。加えて、フェアリー(妖精)は害虫扱いで人格も無いことになっているなど、笑いを取るところも組み込まれている。魔法のワンドなど小物も用意されていて、この奇妙な世界観はそれなりに楽しめる。
一方、ストーリは至ってシンプル。警官2人がたまたま発見した魔法のワンドを巡って悪徳警官、ギャング、エルフの悪者組織「インファーニ」などが絡んで話が進んでいく。ウィル・スミスは達者でこの手の役は余裕でこなしているし、敵役のノミ・ラパスも良い。オークのメイクアップは少々気持ち悪いが悪くはない。だが、娯楽映画としては十分楽しめるが、なんというか映画そのものが軽くてい深みを感じられない。Neflixとしては「最後の追跡」に続けという意図があったかもしれないが、映画の出来としては遠く及ばない。
しかし、配信後の視聴が順調なことから続編の制作はすでに決まっているらしい。舞台背景としては、2000年前に9種族が力を合わせて「ダーク・ロード」を封じ込めたということになっているので、新たな種族を登場させる可能性など布石は用意してあるということか?
予告編
2017年に観た映画
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