映画レビュー
ボクシング物。スポーツ物の映画に多いのは、一旦は挫折した主人公が一念発起してトレーニングし、無謀に見える挑戦で勝利を収めるというパターン。この映画もその形式を踏襲しているが、フィクションではなく実話に基いているのが一味違うところ。
ちなみに挫折から再起して成功、そしてその後にたいてい転落という筋書きはスポーツ物以外、例えばミュージシャン物でもよくあるが、殆どの場合麻薬か酒で身を滅ぼす。それに対してスポーツの中でもストイックでなければやっていけないボクサーは薬や酒をやらない分、話はシンプル。この映画でも、主人公のビニーはギャンブル癖はあるがそれ以外は総じて健康的。
ビニー・パジェンサ役を演っているのは「セッション」で初々しいドラマー役だったマイルズ・テラー。それがこの映画ではボクサーの体格で精悍な顔つきになっていたのでびっくりした。交通事故で骨折した首を固定するための仰々しい金具を付けた不便そうなところから、ボクシングの試合シーンまで本人に成り切っている感じがした。
トレーナー役のアーロン・エッカートは10年前の「ダークナイト」での2枚目市長役のときにはふさふさしていた髪がほとんどなく、かなり太って変わり果てた姿。これが地なのか、はたまた役作りでこうなったのか・・・
あと、脇役では父親役のキアラン・ハインズが良かった。映画の初めの方では、トレーナーやマネージャーに対しても高圧的で、息子を金づると見ている父親の雰囲気だったのが、事故の後は息子を気遣う以上に弱気になっていくところを好演していた。
事実に基いているのでストーリーに大きな違和感を感じるところはないが、多少は脚色サれている部分もある様子。特に、感じの悪い親子のマネージャーは憎まれ役ではあるが、試合を組むところではいとも簡単にタイトルマッチの話を取ってくる。体重を増やして階級を上げた最初の試合がタイトルマッチで、それに勝ってしまうというのは眉唾な気もするが・・・
予告編
2017年に観た映画
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