今日の映画 – 女王陛下のお気に入り(The Favourite)

The Favourite

映画レビュー

最近では「ヴィクトリア女王 最期の秘密」に続く英国王室物。時代はこの映画の方が古くて18世紀初頭を舞台にしたドラマ。イングランドの議会など、いくつかの短いシーンを除いた大半は王宮の中の話。そして、その大半は、アン女王(オリヴィア・コールマン)、レディ・サラ(レイチェル・ワイズ)、女官から成り上がるアビゲイル(エマ・ストーン)、以上3人の女性のドロドロとした人間模様に費やされる。

3人の序列は、接待的に上位のアン女王、続いて貴族で女王の側近として権勢をふるうレディ・サラ、そして貴族から没落した平民のアビゲイル。このアビゲイルが貴族に復帰するだけでなく、レディ・サラに取って代わろうという野心の持ち主で、そのためには手段を選ばない性悪女。俳優として3人の中で一番若く、去年のアカデミー主演女優賞を取って上り調子のエマ・ストーンはこの役のイメージに合っているといえば合っている。

オリビア・コールマンは、レディ・サラとアビゲイルを愛人として従えているが、どちらからも尊敬されているとはいえず、亡くした子供の数だけうさぎを飼っている孤独な女王の役。リュウマチ持ちで、従僕に怒りをぶつけるし、めんどうな執務はレディ・サラに任せっぱなしで能力、人間性両方に問題があって好感を持ちにくい女王を好演。

レイチェル・ワイズは最近では「喜望峰の風に乗せて」で、誰が演ってもよいような主婦の役をやっていたが、この映画ではレディ・サラの役で生き生きとしていた。レディ・サラはアン女王を繰ることによって権力を手に入れ、幼なじみのアン女王と二人っきりのときにはタメ口で会話している。利己的な人間に違いないが、アン女王に多少なりとも愛情を持っているのがアビゲイルと違うところ。

この3人の達者な女優以外では、最近では「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」で主演したニコラス・ホルトがトーリー党の貴族役で存在感を示していたが、男優は総じて影が薄い。物語の相当な部分はフィクションだと思ってみていたが、Wikipediaによると、レディ・サラもアビゲイルも実在していて、アビゲイルがレディ・サラに代わってアン女王の寵愛を受け、レディ・サラが去っていったというのも事実らしい。いやいや、大変ですわ。

近々発表される2019年のアカデミー賞では10部門にノミネートされているらしい。そのうち、いくつかは獲得するのではないかと思う。

予告編

2019年に観た映画

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