映画レビュー
グレン・クローズという女優はデビュー作が「ガープの世界」、その後「白と黒のナイフ」、「危険な情事」と順調だったのに、その後の作品に恵まれなかった感じ。久しぶりに主演する映画を観て、思った以上に老けているなと思ったら、今年で71歳だった。ということは、「危険な情事」出演時には既に40歳だったことになるが、もっと若く見えていた。「危険な情事」でマイケル・ダグラスにストーカーのようにつきまとう姿が記憶に残るが、この映画の予告編を観て、怖いおばちゃん復活かという期待とともに映画館へ。
ジョーン(グレン・クローズ)は学生時代に師事していた妻帯者の先生ジョゼフ(ジョナサン・プライス)と結婚したものの、作家として身をたてようとした夫の才能は平凡で、自分の方が才能があることが判明。その後40年間夫のゴーストライターとして数々のヒット作を書いてきた。ここらは、最近観た「メアリーの総て」の主人公メアリーが女性だから本を出しても売れないので夫の名前で初版を出さざるを得なかった事情に通じる。
一方、ジョゼフは結婚前は輝いて見えたのに、実はダメダメで、妻の才能にコンプレックスを抱きながらも、内助の功によってもたらされた名声をエンジョイしている。しかも、下半身がゆるゆるで、夫婦で招待されたノーベル賞の授賞式会場でも浮気しようとしているだらしなさ。夫婦間の対比を際立たせようとしてなのか、ジョゼフは息子を理解しようとせずに高圧的だったり、食べ物に意地汚いなど、高感度ゼロというか嫌悪感を感じるように描かれていて、分かりやすいが少々過剰演出かなと感じた。
ジョーン役のクレン・クローズが40年間溜まった鬱積をぶちまけるところは期待通り。若い時のジョーンを演っているアニー・スタークはグレン・クローズの実の娘らしい。意外と良かったのはゴーストライター疑惑を記事にしようとつきまとう記者役のクリスチャン・スレーター。ジョーンに粘着的な取材を敢行するが、会話の内容や態度が一つ間違えばジョーンに拒絶されてしまう限界を超えない微妙なところで話を引き出そうとする演技が光った。
結末がどうなるかを映画を観ながら考えたが、まあ、ああいう落とし所しかないかな。一応、ジョゼフの幸せな人生が続かなかったということで、一応気は晴れたし。
予告編
2019年に観た映画
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