映画レビュー
ウェス・アンダーソンの最新作。ストップモーションで撮った映画。アンダーソンは実写でも独特の色使いとカメラの動きで絵本のような綺麗な映画を撮る監督というイメージがあったけど、人形を使ったアニメにすることで色だけでなく被写体のおもちゃのような動きが相まって独特の世界を作っている。
日本のどこかにある「メガ崎市」という未来都市や、ゴミの島である「犬ヶ島」などの設定は斬新だが、登場する人間や犬のキャラクターも立っていてよいが、ストーリだけを追ってみればあっさりしていて至ってシンプル。この映画は物語を楽しむ映画ではなく、全体の雰囲気と随所に埋め込まれた黒沢明や宮崎駿へのオマージュやトリビアを楽しむ映画と思う。黒沢作品を全部しっかり観ていればもっと楽しめたと思うが、そこまで観ていないことをちょっと反省。
映画の制作スタッフを見て気がついたのは、日本人で参加しているのは原案の野村訓市だけで、ほとんどが外国のスタッフによって作られていること。しかも脚本はアンダーソン単独によるものなので、この映画は彼の頭の中にある「日本」のイメージを具現化したものだろう。タコの刺し身の切り方が変とか、サバのような魚をまな板へ置く向きが左右反対とか、突っ込みたくなるところもあるが、それもご愛嬌。
それに加えて声優陣が豪華。有名どころではナツメグのスカーレット・ヨハンソンだが、セリフの多いチーフをブレイキング・バッドのブライアン・クランストンが演っているとか、チョイ役とはいえ、フランシス・マクドーマンドやオノ・ヨーコが出演している。それに加えてアンダーソンの映画では常連組のビル・マーレイ、エドワード・ノートン、ボブ・バラバン、ジェフ・ゴールドブラムといった面々を贅沢に脇役の犬たちに振り分けている。
映画はTOHOシネマズ 六本木ヒルズで観たが、ロビーで撮影に使ったセットを展示していたので見てきた。これを少しずつ動かしてコマ取りする手間を考えると気が遠くなる。
予告編
2018年に観た映画
2018年版「今日の映画」のリストはこちら。