映画レビュー
1980年代の北イタリアで、夏の間別荘に来ている教授の息子エリオ(ティモシー・シャラメ)と学生で教授のアシスタントのオリヴァー(アーミー・ハマー)の男同士のラブ・ロマンス。
イタリア映画なので冒頭にはクレジットが出るが、その背景の映像はデスクの上に置かれたギリシャ・ローマ時代の彫刻の写真。そこにパステルで手書きしたようなクレジットが重ねられる洒落たデザイン。このギリシャ・ローマ時代のイケメンを1980年代に移し替えて映像化するというのがこの映画の狙いなのかなと思った。
たしかに、ティモシー・シャラメは目鼻立ちがはっきりした顔つきで彫刻との類似性を感じるし、映画の中ではほとんどパンツ一丁。裸の上半身は鍛えた感じではなくほっそりした少年の体つきだが、ゴリアテに石を投げようとしているダビデもマッチョではなかった。それと比べると、アーミー・ハマーも男前ではあるが、多少もっさり感がある。
イタリアの田園風景、豪華ではないがしっかりとした作りの別荘の建物や調度など、映像は綺麗に撮ってある。エリオとオリヴァーのうち片側を女性に変えたとしても恋愛映画としてそのまま成り立ってしまいそうな感じ。ありふれた映画になってしまって商業的には成立しないだろうけど。そう思ったのは、エリオもオリヴァーも相手に嫌われているのではとか、思いが伝わらないのではという気持ちはあるが、相手が女ではなくて男であることへの躊躇、抵抗、悩みなんかが一欠片も無いから。
そういう点では、この映画はゲイとかを超越した普遍的な恋愛の映画なのかもしれない。その割には観ていてもあまりときめかないが。エリオの環境が、父親は大学教授。母親はお手伝い付きの別荘を相続するくらいの金持ちで、ドイツ語の小説を翻訳しながら朗読できるような人。エリオ自身も英語、フランス語、イタリア語ができてピアノとギターを演奏し、趣味で作曲する才能があり、それでイケメンとなると感情移入もなぁという感じ。
映画は2人が別れるところで終わるが、原作はその15年後に再会するということになっているそうで、続編の映画化がすでに計画されているらしい。
予告編
2018年に観た映画
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