映画レビュー
主演が「きっと、うまくいく」、「PK」のアーミル・カーンとくれば外しようがないと思って観に行ったが、やっぱり面白かった。
この映画での役はインドのレスリングの元チャンピオンで、自分が果たせなかった国際大会でのチャンピオンを子供に託そうとしたが生まれた4人の子供が全員娘。一旦は夢を諦めたものの長女と次女にレスリングの才能があるのを見つけてから2人を猛特訓するという話。嫌がる娘たちに強制的にレスリングを仕込むところはインド映画らしいユーモアを感じさせる。
カーンは回想シーンでの現役レスラーから初老になるまでを演じている。今までの映画でも役作りのために肉体改造を繰り返してきたが、この映画でも若いときの締まった体から中年になって贅肉が乗ってくるところまで年代ごとに体型を変えている。
後半は成長した長女が国内チャンピオンになり国際大会に挑戦するが壁に当たり伸び悩むが、父親の指導とアドバイスで見事コモンウェルスの大会で金メダルを獲得する。この過程でレスリングの試合のシーンが多く挿入されているが、素人目に見てかなり本格的な試合に見える。娘役の俳優はレスリングの経験がないらしいので、猛特訓したのか、うまく代役を使ったのか、SFXを使ったのか分からないがけっこう手に汗握る名勝負に見えた。
映画の宣伝では、従来のインド映画との違いを訴求しようとしたのか踊るシーンはないと謳っているが、結婚式のシーンではちゃんと踊っている。脈絡なく、突然踊りだすのではないので違和感はないが、インド映画の伝統を残しつつ国際的に売れるように抑え気味に作った感じ。それでも、ナレーションの代わりに歌で説明するインド映画の様式はしっかり使われている。敵役のナショナルチームのコーチや、笑いを取る甥など、分かりやすい配役も期待通り。
映画の製作年は2016年で、日本公開すればある程度の成功は見えているのに、1年以上要しているのは何故だろうか? 映画の内容はスポ根物で、それにインドでの女性の地位向上のメッセージが加わったもので「きっと、うまくいく」とは脈絡がないにも関わらず、副題に「きっと、つよくなる」と付け加えているのは配給会社のあざとさが見えて感じ悪い。
ハイライトの金メダルを獲得する大会のコモンウェルスゲームズは日本では馴染みがないが、イギリス連邦に属する国や地域が参加する4年毎のスポーツ大会。ちょっと意地悪な味方をすれば、事実に基づいた映画なので勝手に話を作れないので、伊調馨や吉田沙保里が出てくるオリンピックや世界選手権を避けたところでの話にしたということか。
それでも充分楽しめるし、みえみえ伏線の5ポイント技を最後に炸裂させるところで期待に答えてくれるところがインド映画の良いところ。
予告編
2018年に観た映画
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