レビュー
上手に作られた犯罪コメディ。シリアスドラマではないので、ご都合主義、結果オーライで全く問題ないが、結果に至る伏線を省略しすぎると薄っぺらい軽い映画になってしまいがち。この映画は細かく「理由付け」が埋め込まれていて、それが人を食ったようなコメディ調なのでより笑いを誘われる。
たとえば、金庫破りのために、爆破の名人を脱獄させて事が終わったら刑務所に戻すという無茶な筋書きを、一応理屈が通る方法で実行して成功してしまう。計画が狂ったときの修正やバックアップなんか全くない非現実的なプランを真面目くさってやるところはコメディの定石。
さらに、運転上手の妹が目立つ青いスポーツカーでぶっ飛ばすところは、観ていても目立ちすぎて危ないと思うが、「この先にパトカーは1台だけで、既に手を打ってある」というようなセリフ。そのパトカー対策がまた笑わせる。
そういうあほらしいところの手順をちゃんと踏んだ脚本がよく出来ているが、それに加えて、出演俳優もなかなか良い。ダニエル・クレイグはジェームズ・ボンドのイメージから一転して囚人役。コメディに出演というのはイメージしにくかったが割としっくり来る。
アダム・ドライバーは、ダメダメのカイロ・レンで評判落としたが、「パターソン」に続いてこの映画で、もっそりした役に向いていることが分かった。
もう映画は終盤というところでヒラリー・スワンクを登場させたり、セス・マクファーレンをゲスト出演風に出したり、キャスティングは贅沢。子役に「Take Me Home, Country Roads」を歌わせるところなどもソツがない。
結末は、チャニング・テイタム演ずる兄ちゃんが心変わりしたように見せておいて、その後の終わり方が上手い。よく出来た映画と思うけど、配給会社の宣伝が、スティーブン・ソダーバーグつながりで「オーシャンズ11」を必要以上に前面に出すのはどうかと思う。
予告編
2017年に観た映画
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