映画レビュー
新聞の映画コラムでの評価が高く、怪優ギレンホールが出ているので観に行った。
最近、複数の時系列のカットを切り替えながら魅せていく映画が多い気がするが、この映画もそのタイプ。ただし、そのうちの一つが劇中劇。
まず、金持ちの娘で芸術家を断念してビジネスの道を選ぼうとするスーザン(エイミー・アダムス)と貧乏人で作家志望のトニー(ジェイク・ギレンホール)が学生時代に知り合って、結婚し、2年間で破綻するまでがひとつ。
そして、離婚から19年後、トニーが「ノクターナル・アニマルズ」という小説の入稿前原稿をスーザンに送りつけてくる現在がふたつ目。ちなみに「ノクターナル・アニマル(夜行性動物)」は、不眠症で夜に寝ないスーザンにトニーが名付けた渾名。
最後は、スーザンが「ノクターナル・アニマルズ」を読むのと平行して映像として見せられる劇中劇。ここでは、エドワードとローラの夫婦をギレンホールとアイラ・フィッシャーが演じている。
結論から言うと、期待して観たのに内容はがっかり。まず、映画の冒頭で太った裸のおばさんが踊るシーンが延々と続く。これがかなり醜悪で、どうなることかと思ったらスーザンがプロモートするアートの会場での展示物であることが分かる。でも、これがストーリーに影響するかというと全く関係しない。初っ端で、ひとつカマしてやろうという意図があるのかどうか分からんけど、気分悪い。
スーザンが原稿を読みながら過去を回想するようなシーンと「劇中劇」を重ねることで、「ノクターナル・アニマルズ」には、トニーの創作部分と19年前の事実とが混ざったものではないかと想像させられる。特に、「劇中劇」の夫役をギレンホールが演ってるので、その話の結果が「現在」にどう重なってくるかが見ものではないかと思いつつ観ていた。ところが「劇中劇」の部分は全くの創作で事実とは全く関係ないことが後で分かって拍子抜け。
ラストでスーザンがレストランでトニーに待ちぼうけを食らわされるシーンを観て、やっとこの映画が、「19年前に捨てられた恨みを、レストランへ行かないことで仕返しするというトニーの遠大な復讐劇」であったことが判明するというオチ。そういえば、スーザンのアトリエに「REVENGE」と大書された作品が展示されていたところから推察すべきだったか?
映画の構成部分のうちでは、「劇中劇」の部分、特にテキサスの保安官風の刑事役のマイケル・シャノンと犯罪者役のアーロン・テイラー=ジョンソンが良い。ただ、「善良な一般市民が、無法者の前では全く無力で為す術もないが、痛めつけられた後に復讐者となって・・・」というストーリーは「わらの犬」など既に使い尽くされた話で新味はない。
予告編
2017年に観た映画
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