映画レビュー
フランスの画家ポール・セザンヌと小説家エミール・ゾラの映画。2人の名前は知っていたが、彼らが1歳違いで同じ町で育った幼馴染であることを含めてどういう生涯だったのかまでは知らなかった。映画を観る前に、Wikipediaを斜め読みしてざっくりとした予備知識を仕込んでおいた。
結果からいうと、この予備知識が役に立って映画が分かりやすかった。映画では少年時代、20歳過ぎ、30歳前後、40代~60歳あたりと異なる時代の出来事を前後して進んでいくが、Wikipediaに載っているような友情や絶交に至るエピソードや背景を割りと忠実に織り込んでいるので複雑な進行に付いていくのに役立った。監督からすると、最低限の予備知識は観る側が持っているものという前提で撮っているのかもしれない。
もちろん、映画はWikipedia以上のもの、特にセザンヌとゾラの性格、人格にまで踏み込んで描いていて、そこには想像を交えた創作が加わっていると思う。
史実として、セザンヌは当初印象派の一員だったのが後年は別行動で独自の世界を作っていく、これは印象派が台頭して画壇を独占していく流れに乗り損ねたのかもしれないし、乗りたくなかったのかもしてない。映画で描かれるセザンヌのひねくれた性格は、画家としての名声を掴み損ねた結果の性格かも知れないし、逆にその性格が成功を阻んだのかもしれない。さらに、セザンヌは裕福な銀行家の父親からの仕送りに頼っていて、その経済的支援があったからこそ周囲に迎合せず反発を繰り返して行けたのかもしれない。対するゾラは、経済的な後ろ盾がなかったので、売れる作品を書かねばならず、それが作家としての成功に繋がったと匂わせるくだりがある。映画はそういった諸々のことを逐一説明するではなく観る側に想像させるような創りでこれは悪くない。もう一度観るとまた違った風に見えるかもしれないと思う。
セザンヌもゾラも歴史に名を残したが、生きているうちに成功したゾラは数ある作家の一人に過ぎないのに対して、死んでから評価されるようになったセザンヌがキュビズムなど20世紀の絵画に影響を与えた画家として認められている現実のその背景を垣間見ることができて面白かった。
予告編
2017年に観た映画
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