映画レビュー
久しぶりのフランス映画。「ショコラ」という題名の映画は過去にいくつかあったが、それらとは全く関係ない別脚本の映画。
映画の舞台は19世紀末~20世紀初頭のフランス。先日観た「未来を花束にして」が1910年代のイギリスの映画だったので時代背景は近い。主人公はサーカスの黒人芸人ショコラと相方のフティットでどちらも実在した人。
フランスはアフリカに植民地を持っていて移民に寛容だったこともあって、今では主演のオマール・シーのようなアフリカ系フランス人が総人口の約2割を占めている。しかし、映画は100年以上前のことなので黒人はまだ珍しく、ショコラは場末のサーカスで芸をすることもなく見世物のようなことをやらされていた。そのサーカスに職を求めてやってきたのが、かつては名声を博したものの時代に取り残されて落ち目の道化師フティット。単独では仕事をもらえないことを自覚したフィティットがたまたま見かけたショコラを相方にすることを思いついたところから快進撃が始まる。
ショコラ役のオマール・シーは、あまり期待せずに観に行った映画「最強のふたり」で初めて見たけど、見た目と違ってセリフ回しが軽妙で意外にやるやんという印象やった。元はテレビのコメディアンやったというから、今回の役にはぴったりハマってる。
フィティット役のジェームス・ティエレは、なんとチャップリンの実孫でサーカス界に関係ある人らしいので、こちらも適役。顔を白塗りにしてダブダブのズボンを履いた道化の格好のおっさんやけど、腹ばいになって手足を使わずに前進するなど、体の動きはアスリート並でびっくりした。
ストーリーは、ミュージシャン物の映画によくあるような、無名の主人公がスターに駆け上がって成功を謳歌したのもつかの間、その後転落していくというパターン。だいたいは、真面目に努力していたのに、成功するにつれ傲慢さが芽生えて友人を無くし、酒と女とギャンブルでお金も無くす。現代物だとほぼ100%ドラッグに手をだすが、100年前だとさすがにコカインもないだろうと見ていたら、アヘンチンキというのがでてくる。
最後にダメになってしまうのは自業自得であるものの、他の映画と違って、ショコラの場合は見世物として人間扱いされていなかったところがスタートで、その後成功しても周りからは白人と同様には接してもらえなかったというハンディキャップがあるのでちょっとだけ同情してしまう。その中で、フィティットは相方として比較的フェアに付き合うし、最後まで友情は続いていた。それでもギャラの配分はフィティットが多く取っていたというくだりがあるから完全に対等というかんじでもなかったかも、まあ2人は師弟の関係でもあるし。
ショコラは芸人として成功することで自我に目覚めて、いつもフィティットに蹴られて張り飛ばされる役割を嫌うようになり、サーカスの芸人ではなく役者になろうとしてシェークスピアのオセロに挑戦する。その向上心はええねんけど、もし成功した時に、現状を受け入れて無茶をせんかったらもっと幸せやったんかもと考えると複雑な気分。ショコラに知恵を付けた子連れのおばちゃんは最後まで尽くし通したけど、ハイチ人のおっさんは国に帰ってしまいよったし。
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2017年に観た映画
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